魔王に捧げる物語



大きなクローゼットの中を物色していると、


「ミラ様………?」

と控え目な声がかけられた。

「スー!上着を探してるの」

「上着ですか……?一体どちらに行かれるのでしょうか?」


「白い魔王さんのところ、風が強いからって」


「…………カイン様ですか!!!!?」



一瞬声が裏返って、スーが相当驚いている。

不思議に思って振り返って見ると、かなり目を見開いていた。


「そう、わたしみたいな人がいるから、会ってみる?
てニルが言ったの……」


「………ミラ様、すぐにドレスをご用意します!

イシュ!!」


よくわからないが切羽詰まった様子でスーが叫ぶと、呼ばれたイシュも何事かと飛び出して来た。


「ミラ様がエリアーデ様にお会いするそうです!

見劣りしてはいけません!すぐにご用意しましょう!!」


「まことですかっ!?」

「話している暇などありません、急ぎます」

「はいっっ!」



スーはどこから出したのかわからないドレスをもってミラに迫り、イシュも歩くのがもったいないような靴を持っている。



< 164 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop