魔王に捧げる物語
大きなクローゼットの中を物色していると、
「ミラ様………?」
と控え目な声がかけられた。
「スー!上着を探してるの」
「上着ですか……?一体どちらに行かれるのでしょうか?」
「白い魔王さんのところ、風が強いからって」
「…………カイン様ですか!!!!?」
一瞬声が裏返って、スーが相当驚いている。
不思議に思って振り返って見ると、かなり目を見開いていた。
「そう、わたしみたいな人がいるから、会ってみる?
てニルが言ったの……」
「………ミラ様、すぐにドレスをご用意します!
イシュ!!」
よくわからないが切羽詰まった様子でスーが叫ぶと、呼ばれたイシュも何事かと飛び出して来た。
「ミラ様がエリアーデ様にお会いするそうです!
見劣りしてはいけません!すぐにご用意しましょう!!」
「まことですかっ!?」
「話している暇などありません、急ぎます」
「はいっっ!」
スーはどこから出したのかわからないドレスをもってミラに迫り、イシュも歩くのがもったいないような靴を持っている。