魔王に捧げる物語
すると彼はパッと顔を輝かせ、
「姫君を間違える事などありえませんっ!!」
と、どこからくるのか謎の自信をもって答えた。
「それに、こちらがあります」
彼は輝くような笑顔で、今朝の放置されていた手紙を捧げるようにミラに手渡した。
恐々受け取って、もう一度目を通すが結局内容はわからない。
文字が読めない、
そう言うのは今更だが、やはり恥ずかしい。
彼の姿はどこかのお城から飛び出してきた騎士の様だったから尚更だ。
チラリと視線を合わせると嬉しそうに頷いてくる始末。
仕方ないよね………。
隠してもしょうがないと、悩んだ結果、腹をくくった。
「…………文字はわからないの」
小さな声だが確かに言った。
数秒の事なのにひどく長く感じた。
彼はハッと、息を飲んでから切なげな表情を作る。