魔王に捧げる物語
世界の果て、その意味もわかった気がする。
花弁が風もないのに舞い、噎せかえる香りが満ち、穏やか過ぎる時間が現実を忘れさせた。
死を経験した事はないが、こういった景色を天国というのかもしれない。
生き物のいない世界。
果てであり、この世のものではないと感じた。
「ミラ?」
声が聞こえキョロキョロとする。
しかし対象は見当たらない………、首を傾げた瞬間、
「こっち、上だよ」
と指示されて見ると、ニルは空中に寝転んでいた。
「なに……してるの?」
「特になにもしてないよ、ミラこそエリアーデと話していたのはいいの?」
「大丈夫。エリーはどこかに行っちゃったし、カインが……ニルのところに行くといいって」
「そう」
納得したらしい彼はふわりと着地し、ミラの所へ来た。
「ここは、なんだかすごいところね……。
ニルはこんな世界をたくさん見てきたの?」