魔王に捧げる物語
ⅩⅡ
イシュとミラは広大な雪原に来た。
深々と降る雪は幻想的だが寂しげな景色でもある。
見渡す限り広い真っ白な原っぱは、何処へ行けばいいのかわからなくなった。
「見えますか?遥か上空まで濃密な魔力が周囲を満たしています」
イシュの言葉にゆっくりと瞬くと、穏やかに降る雪とは対象的な眩しい程の光。
嵐のようだった……。
奥の景色ほど、激しく渦巻いている。
道は示されなくてもわかった。
「いくわ、あのずっと奥にニルがいるんでしょ?
わかるの………、
嵐だって構わないよ、わたしは戻らない」
どれだけ歩いても構わない。疲れたっていい、
彼と離れたくないから。
一歩ずつでも進んで、近づいてみせる。
進みだしたミラの後をイシュが続いた。
空はまだ赤く、太陽は見えなかった。