魔王に捧げる物語
「誰に刃を向けている、腐りきった人間」
地を這うような声にゾクリとした。
可愛らしい雰囲気など欠片もなく、不遜な態度と恐怖を感じるほどの視線が向けられた。
それでもエリュオンはミラから視線を外さない。
「何故こんなところに魔王の女がいる?」
こんなところに?
ふざけてる。
誰のせいだと思っているのか!
ミラは怒りを抑えきれずにキッと睨んだ。
「あなたがあんな事をしなければこんなところにいない!!
ニルと引き離すなんてゆるせない!」
「俺が?何を見た?
言いがかりだな!
嵌められたのはこっちだ馬鹿者」
「よく言うわ!女の人を斬りつけたのを見たもの!
返り血が何よりの証拠っ!」