魔王に捧げる物語
「あれが女なものか!人の皮を被った化け物だ。
魔王の傍らにいたから視たのはいいが………、
人形風情に何か言われる筋合いなどない」
あまりの怒りに黙り込むミラに代わり、イシュの剣が動いた。
「減らず口、斬り捨てようか………。
姫君への侮辱は我らだけではない、魔王への侮辱と受け取る!」
厳しい言葉がかかろうとも、エリュオンは不敵な笑みを浮かべる。
「いずれ死ぬ命だ、あの化け物の血に侵食され……呪いで死ぬ。
白の魔王にまんまと嵌められたものだ」
「どういう意味だ?」
怪訝な顔でイシュが少しだけ剣を引く。
すると、エリュオンは自嘲ぎみに笑った。
「…………役目を果たさなくなりつつある柱を折り、
危険因子になりえる俺をついでに始末する………。
奴らは結局どっちに転んでも良かったという事だ………」