魔王に捧げる物語



所詮人間などどうでもいいと考えているような奴らだ………。


と小さく呟いたのをミラは聞き逃さなかった。


カインが何を考えているのかはまったくわからないが……少なくとも妻を、エリアーデをとても大切にしているようだった。


世界の事も同じではないのか?


エリュオンは危険と言えば危険だが、ミラにとっては大して意識する存在ではない。


自分とは住む世界の違う人間である事は間違いないし、それにニルと離れる事になったのは彼のせいであるため許せなくなった。



いっそ………消えてくれればいい。


今すぐでも…………。




暗い気持ちに体が支配されていく。


こんな気分はきっと生まれて初めてだ……。




怒りを力にして立ち上がり、剣を構えようとした瞬間。


パチン、と何か弾くような音が響く。




「みーつけた」




気のない様子の声が響き、突然氷の檻が出来上がった。




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