魔王に捧げる物語
さぁ、とエスコートされるように手をとられた瞬間に目の前の世界は大きく変わっていた。
雲一つない空、
澄みきった空気、
輝く水面。
そして、広大な湖にぽつんと浮かぶ壮麗な城にミラは驚く事しか出来ない。
イシュがそっと手を離し、彼女を見上げて微笑んだ。
「いかがでしょうか?」
それどころじゃない、と内心思いながらも彼女は答えなければと焦る。
「すごぃ…ところですね……」
………そうじゃないっ!
聞きたいのは何が起きたのかなのに!
微妙に声が上擦った恥ずかしさも合わさり、もうどこかへ隠れたくなった。
イシュが肯定するように何度も頷く、
「ここはとても心地の良い場所ですので、きっと気に召されるでしょう」