魔王に捧げる物語
ⅩⅢ
「どうして……?」
来たの?
そう続くとわかった。
言い付けを破ったけど、こればかりは仕方ない。
会いたかったから。
いなくなってしまう気がしたから………。
ズズッと鼻水をすすり見上げる。
端正な顔が真上にあった。
「いなくなるかと………思ったの」
美しい金緑の瞳が揺れる。
「そんなのイヤ、イヤだよ……!」
「………ミラ」
ギュッと抱く腕が離れなければいい。
力強い腕の中ならきっと不安にならないから。
自分には何もないけど、気持ちだけはちゃんとある。
自信を持っていたい、
誰より彼を想っていると。
「傷だらけだよ……。
ニル、大丈夫だよね?」
お願いだから、
大丈夫だと答えて。
祈るようにしながら彼を見つめると、澄んだ瞳が少し曇る。
「………………力を使い過ぎたから」
「ニルは魔王でしょ…?」
「全能じゃないよ、魔力が離れているし」
光る粒子は確かに少しずつ離れている。
でも、認めたくない!