魔王に捧げる物語
何か…………。
耳をすますと、小さな小さな音が響く。
…………???
途切れ途切れだが、歌のようなものだった。
幼くも美しいきれいな声、よく伸びる高い音。
知らない声だ………。
歌が少し大きくなり、不思議な気分になった。
酒を飲んだときの心地よい酩酊感か、寝起きのふわふわとした浮遊感か………。
意識を失ってはいけないと思いながらも、抗う事が難しくなりはじめる。
ひとりぼっちだから、ダメだ。
ニルはいないのだ。
誰も抱き上げてはくれない。
カインもきっと助けてはくれないから………。
ニル……………。
彼の事を思い浮かべながらプツリと意識が途切れた。