魔王に捧げる物語




何か…………。


耳をすますと、小さな小さな音が響く。


…………???



途切れ途切れだが、歌のようなものだった。




幼くも美しいきれいな声、よく伸びる高い音。


知らない声だ………。




歌が少し大きくなり、不思議な気分になった。


酒を飲んだときの心地よい酩酊感か、寝起きのふわふわとした浮遊感か………。


意識を失ってはいけないと思いながらも、抗う事が難しくなりはじめる。



ひとりぼっちだから、ダメだ。


ニルはいないのだ。


誰も抱き上げてはくれない。



カインもきっと助けてはくれないから………。







ニル……………。






彼の事を思い浮かべながらプツリと意識が途切れた。
< 239 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop