魔王に捧げる物語
寂しい場所………、私がいたところよりもずっと。
ミラが一歩を踏み出すと、再び周囲が一変した。
そこは、
さっきとは違って見渡す限りの柔らかい陽が射す草原。
柔らかい土に細いヒールが沈んで、体制が崩れそうなり慌てて靴を脱いだ。
裸足でも草のおかげで痛くない。
片手に靴を持って、見つめた景色はいつか見た風景に驚くほど似ていて………、
抜け落ちて、埋まることのなかった………、忘れていた、幼い頃のあの日を鮮やかに思い出させた。
この先、
この先にアレがあれば………っ!!
早く確かめたいのに、ドレスが邪魔をして小走りにしか進めない。
ようやく目的のところにたどり着いて、その場に屈むと、
彼女の記憶が正しかった証拠が点々とある。
散らばった花弁、
作りかけて、やり直してを繰り返した、いくつもの不器用な花の束。
やっぱり………、
そうだったんだ。
予感が確信に変わる。