魔王に捧げる物語
“それ”がいるだろう場所を見れば、大きな黒い塊が横たわるようにいた。


小さかった自分の視界には映らなかった景色は、大きくなって別のもののようにも見える。



ゆっくりと黒い塊に近づくと、どんどん全貌がはっきりとして、


塊は、まるで弱りきっているようなぼろぼろの羽。


その隙間からほんの少しだけ覗く青白い肌。

大きかったり小さかったりする羽が全身を覆っている姿は、みの虫のようで思わず顔が綻んだ。




ねぇ、来たよ……。



眠っているかのようなそれの前に座り、ミラはとうとう声をかけた。




「きたよ……ニル」



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