魔王に捧げる物語
声に反応したように、もぞっと全体が動き、少しづつ何枚かの翼が開く。
動くたびにパラパラと抜け落ちる羽がとても痛々しい。
ぬっと伸びた片手で身体を支えるように上体を起こして、顔の周りにある翼を、もう片手で鬱陶しそうに払うと。
以前と少しも変わらない姿が現れる。
長い睫毛が縁取る瞼がゆっくりと持ち上がって、金緑の瞳がミラを捉えた。
「………待っていたよ、ミラ」
気だるげな様子も変わっていなかった。