魔王に捧げる物語
Ⅲ
「おいで、」
…………??
彼女が首を傾げると、ニルがスッと両手を伸ばしている所だった。
「裸足だったら怪我をする」
あ!
今更思い出して顔が熱くなって俯くと、くすっと笑われた。
「気にしなくていい、誰も何もいわないから」
ほら、早く。
急かされて少し気まずかったけれど。
ミラがゆっくり彼の腕に近付くと、脇の下に手を入れられてそのままふわりと抱き上げられる。
驚いてしがみつくと、
「落っことしたりしないよ」
ニルが優しく目を細めた。
居心地が悪くて視線をさ迷わせていると彼は、
行くよ。
と短く言い、飛ぶのだとわかってギュッと目を閉じた。