魔王に捧げる物語
ニルが奥の方に歩き出してしまい、ミラは慌てて後を追うと、
そこは寝室のようで、天蓋付きの大きなベッドがあった。
五、六人は寝られるのかな………?
たくさんのクッションが並んだベッドは、さっきの部屋とは全く雰囲気が違って、彼の纏う黒で統一されている。
細かい金の刺繍が入ったクッションや枕、羽布団はとても上品で、彼に似合っていると思った。
「こっちも、あっちも、好きに使って構わない」
ぽふん、とベッドに腰を下ろした彼がミラに言った、
「欲しい物や、必要な物があったらいつでも言うといい」
「……はい」
「衣服、部屋着などはクローゼットの中に一通り入ってる」
「……はい」
ふと、何か思い出したように彼がミラから視線を外した。
その瞬間、彼の纏う雰囲気がガラリと変わる、
「誰か、一人来い」
すると、音もなく女性が現れた。
深々と頭を垂れて、
「魔王様におかれましては………」
「良い」
「はっ!」
「彼女に仕えよ、この身と等しく尽くせ。如何なる無礼も赦さない」
「承知致しました」
「以上だ」
彼が言い切ると、女性は再び深々と頭を垂れた。