魔王に捧げる物語



「…………」



ミラは無言でもぞもぞと彼に近寄り、




バチンッ!!!




と、スッキリするほどいい張り手を決めて、のしのしと足音も荒げて寝室を後にした。













「あっ!おはようございます姫君っ!!」


朝食を作り終えた主婦のようにイシュはエプロンを外し、慌てた様子でミラに一礼した。


「……おはよう」


「どうかなされたのですか??」


声のトーンでわかってしまったのか、不安そうにミラに近づいてくる。


微妙な気分だったが、イシュの可愛らしさで少し紛れた。


「なんでもないの……」


「ですが………お加減でも…」


「悪いのは気分じゃなくて機嫌だよ、イシュ」


「ニ、ニル様っ!!?」



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