魔王に捧げる物語
「お下がりください……、」


来ますっ!


何がなんだかわからないミラの前で、どこから出したのか抜き身の剣を構えるイシュ。



バン!!



と勢いよく開いた背後の扉から、武装した兵士達が駆けつけてミラとイシュに剣を向けて囲んだ。



「帝国領内にこのようなものの浸入を許すとは……皇帝、我が父でありながら嘆かわしい」



ハッと振り替えると、先程までは誰もいなかった玉座に不遜に腰を掛ける人物がいた。

黒に近い灰色の髪、短い部分はニルよりは落ち着いて外側に跳ねる。

長い部分は胸の少し上くらいであり、まとめる事なく下ろしっぱなし。


畏怖を抱かせるような鋭い銀の瞳、意地悪そうに少し上がった口元。


ニル程ではないがそこそこに整い、人ならばかなりものだろう。

白い軍服姿も威厳に満ちていた。



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