魔王に捧げる物語
いろんな事が有りすぎて。
皆が呆然とする中、ニルが口を開いた。
「興醒めだ、我々は失礼する」
はぁ、とカインがため息をついて、
「仕方ないな、横槍を入れたのは私だし……後始末はつけとく」
と、つまらなそうに頷いた。
そこへ、慌てたようにイオがミラ達の元に走ってきた。
「ありがとう………本当に、君に助けられた命を必ず正しい事に使う」
優しい空色の瞳がミラを見つめ、ふと真剣な顔で膝を付いた。
慌てて動いたせいで、ニルの腕の中から落ちそうになりながら、
「いい、の。えと、また会えるかわからないけど……お元気で、イオ様」
チラリと見たエリュオンはふいっと目を反らされ、奥にいたイリスには憎たらしそうな顔で睨まれた。
その表情にズキリと胸が痛んだ。
「もういいでしょ」
ニルに抱き直されて、それ以上は見られなかったが、彼女の憎らしい表情が焼き付いたように離れない。
「イシュ、いつまで呆けている、行くよ」
「はっ…………はい」
ミラはギュッとニルにくっついて、何も考えないようにした。