魔王に捧げる物語
「さて諸君、これをいい教訓にしてくれ。一度くらいは気まぐれで助けてあげたけど、よく理解したね?」
ニル達が消えた後、カインが子供に言い聞かせるような口調で言った。
納得いかないといった様子のエリュオン、複雑な顔をするイオ、そして………。
「カイン様、あの女は何者ですのっ?」
何かに燃えるイリス。
カインがクスクスと笑いながら言う、
「さぁ?大事な娘なんじゃない?魔王の印あったし」
軽い、そして楽しげだった。
「私の魔王様ですのに……あんなひよこみたいな女になんて、絶対に渡しませんっ!!」
「イリス!!」
イオの呼び止める声を無視して、皇女らしかぬ足音で飛び出して行く。
「君はいいの?」
「女に興味などない、」
へぇ………。
感心したようにエリュオンを見つめる彼は一つ、古いものを思い出した。
「………魔王の力は手に入らない、けど違う力は知っているよ?」
スッと銀の瞳が彼を見つめた、
「雪と氷に閉ざされた所、彼の地、禁断が眠るであろう………何をも恐れぬ強者のみぞ災禍を操る……」
意味深な唄がすらすらと流れた後、フッ白い魔王は跡形もなく消えた。