魔王に捧げる物語
Ⅵ
一足先に戻って来たミラは今まさにピンチに陥っていた。
命の危機ではないが別の危機かもしれない……。
戻って来た途端、寝室の壁に縫い止められたからだ。
助けを求めてイシュを見つめるが、彼は小さな両手で自身の目塞いでしまう。
イシュを見つめるミラに気付いたニルが、彼女の手首の骨が軋むほど強く掴み上げた。
「ぃた………っ!」
「イシュ、お前は後。出てって」
「はい……失礼、しますっ」
あっ!そんな……っ!
行かないで!!
と、願うも虚しくイシュが消え、
残されたミラは一人で、絶賛不機嫌なニルに立ち向かうはめになった。