魔王に捧げる物語
「なんでこうなってるか、わかる?」
「………や…、いたぃっ!」
本当に痛くて、骨がミシミシと悲鳴を上げているのがわかる。
涙目になりながら、ニルを見上げるが彼は無表情のまま。
「何故イシュを庇って刃の前に飛び出した?
死ねば解放される、とでも思った?」
意味がわからない。
庇ったのは、イシュを守らなければという一心。
死ぬつもりだったわけではないし、そうなってしまっても仕方なかった、と諦められた。
解放なんて望んでなかった、そんな事を考える余裕など、実際無かったから。
「イシュを……守らなきゃって、思ったから……。
解放、なんて考える時間………なかったよ」
「あったら考えてたわけ?」
「ちが………っ!!!」
「絶対離してなんかやらない、逃げるなら地の果てまで追い詰めて………、」
狂気が光る瞳が近付き、耳元に唇が寄せられ、囁かれる、
「関わった奴を皆殺しにしてあげる…………」
ガクリと力が抜け、崩れた体が彼の腕の中すっぽりと納まる。
震えて力の入らない腕で、必死に胸板を押した。