魔王に捧げる物語
怖い、怖い、怖い!!
ざわざわと不規則な翼が触れては離れてを繰り返す。
狂気じみた執着や圧倒的なまでの力、が恐ろしくて、
潤んだ瞳から涙が零れた。
びくともしない彼の体、力の入らない手首にくっきりと浮かぶ痣。
敵うわけがない。
諦めにも似た感情が沸き、涙で滲む視界に、映ったのは……………、
見たこともない表情だった。
「………ミラは俺に笑ってくれないね」
ポツリ、と漏れた言葉に思考が停止する。
「………好きだと言ったら笑ってくれるの?」
「ぇ……?」
「愛してるって言ったら甘えてくれるの………?
言葉を尽くせば、ずっと側にいてくれるの?」