魔王に捧げる物語
どうして?


そんな事言うの………?



「ニル………?」



今までずっとひとりぼっちだった。

小さい頃からずっと、隙間から覗いた外を歩く人達が羨ましくて、


母親に抱きしめられる子供や、仲睦ましい恋人同士を見つめてきた。

自分には叶わないとわかっていても、
本当は寂しくて誰かがいたらと望み続けた。



誰かに甘えられたら、どんなに幸せなんだろう?

話す相手がいる事は、どれだけ楽しいんだろう?


考えてきた夢はいくつも諦めてた。



最近になって出会った彼らは不思議で、時々怖くて、いつも………優しい。


知らなかった外の世界を教えてくれた。



なんて話したらいいかわからなくて、短い会話になったりもした。


それで、十分。


十分に世界が広がったのに………。



何も知らない自分を、価値なんて見当たらない自分に

笑って欲しいと、


好きだ、と、


甘えてもいい、と、


言ってくれるの?





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