魔王に捧げる物語
「消えようとしてた俺にとって、ミラが向けた笑顔は、太陽に見えたよ。
小さな手が差し伸べられて、
泣く事なんて出来ないのに………泣きたくなるくらい嬉しかった」
人は自然と闇を避ける、魔王も例に漏れない。
人が魔王の存在を理解しない限りは、
不思議と恐れて離れていく。
自分に近付きたいと望む眷族達を除いて。
だから………、異端な少女がこの上なく愛しく思った。
与えた印が様々な日常を奪ったはずなのに、発狂することもなく健やかに育って。
「いつかこの子が大きくなったら、山程欲しい物をあげて………たくさん幸せにするために…………、
魔王であって良かったと思った」
目が痛くなって、涙がどんどん流れていく。
こんな風に想われていたなんて想像も及ばなかった。