キミが刀を紅くした
煌めく脇差し
昨晩、丑松殿が夜帝の心臓を沖田さんの刀で突き刺した。夜帝はすぐにその刀を抜いて放り投げると、苦虫を噛み潰した様な表情で俺たち三人を睨み付けて去った。
それから――。
「おい、起きろ!」
「何してるんだお前、見て分からないのか、吉原は重症人だぞ!」
「知るかそんなもん」
俺はそんな声で気が付いた。
腹を刺された丑松殿が気を失ったから、俺は沖田さんと何とかしなきゃと動こうと思ったんだ。だけど身体は言う事を聞かなくて。
それでいつの間にか意識を手放していたらしい。全身が痛いのは相変わらずだけど、横たわる場所は地面ではなく柔らかな布団だ。
「吉原!」
「止めろ大和屋!」
一体何をもめているんだろう。俺は身体を起こそうとしたけれど痛みに負けて、力を抜いた。
「――いいよ、トシ」
あ、丑松殿。無事だったのか。
「俺が悪い。ごめん、宗柄」
「謝って済む問題じゃねぇ」
「うん。分かってる」
「じゃあ説明しろ」
「……昨日、島原の女たちが」
「違ぇよ」
ふと、大和屋がこっちを向かずに俺の方を指差した。俺は身体を強張らせてしまって声を出す事すらままならなくなってしまった。
大和屋は続ける。
「お前の身の上話なんて興味ねぇよ。村崎はどうなるんだって聞いてんだ。さっさと答えやがれ」
「そうか、そうだったね……村崎殿は夜帝に飛ばされてしまって全身を強く打ってる。暫くは痛むだろうけど、治らない傷じゃない」
「――お前は」
「俺? 少し腹をやられただけだからすぐに治るよ。ありがとう」
大和屋は俺を見た。
――あ、目が、合った。