キミが刀を紅くした
「じゃあ指示すべき事は分かるね半助。簡単なことだ、全く」
犯人扱いされた新撰組の面々は驚きのあまり状況が理解出来ていないらしい。ただ沖田だけは口許に笑みを浮かべたままであった。もしかしたら知っているのかも知れない。内部の裏切りの事実を。
「沖田総司」
「はい」
「近藤勇と共に警護をしろ」
「あとの隊士は?」
「誰が主を狙っているか分からない。だからお前たち以外は帰って良い。頓所で待機していろ」
「そう言う事だそうだ。今回は半助に一任しているから従ってもらうぞ近藤。良いな。では下がれ」
新撰組の面々は俺が呼んだ二人を残して帰って行った。近藤は不服そうにしていたが、主を前に我慢している。沖田は全く逆だ。
楽しそうにしていた。
途端、下の方で騒がしい声がした。主は立ち上がったが俺が制止する。そして沖田に様子を見させた――沖田は、笑っていた。
「裏切り者です、近藤さん」
「なんだと!」
「大したもんだ。よく、見分けなさったな忍の兄さん。俺と近藤さん以外は黒い犬だったらしい」
「――なんと言う事だ」
近藤は頭を抱えた。
主が秘かに俺の頭を軽く撫でていた。俺は軽いお辞儀のつもりで首を少し下げる。正解だった。
黒が首謀者な訳がないのだ。
「警護をするために来たと言うのに、申し訳が立ちません。しかし今は対処が先決。処分については後でお受け致します、慶喜殿」
「うむ。処分なんて考えるつもりはないよ。早く片してくれ」
はい、と近藤は深く礼をした。
「総司、行くぞ」
「はい」
二人は部屋を出て階段を降り、外に向かって走り始めた。俺は窓から様子を見る。本当に新撰組が裏切った。恐ろしい。あそこで一人でも残していたら――いや。
ふと、主が笑った。