キミが刀を紅くした
島原の光は今の俺には痛い。信念の一つも貫けない俺はここの信念ある女性たちに顔向けする事は出来ないのかもしれない。あぁ。
しかも丑松殿がいる。
「ですから丑松さん、よろしくお願いできますか? 心配ですし」
「よく、やった椿。後は任せてくれて構わないよ。花簪のお使いの途中か何かなんだろ?」
「お願いします」
「さーてと。割りと厄介だな。村崎殿が虚無感に襲われてるとなるとな……村崎殿、村崎殿!」
え。
「見えてる? ぼーっとしてると危ないよ。さらって来たのが椿だったからよかったものを」
「え、え?」
なぜ丑松殿がここに。中村殿に島原まで引っ張られたはずなのだけど。どうして華岬にいるんだ。
疑問を抱えていると丑松殿が俺の目の前でひらひら手を振った。
「元気かい、村崎殿」
「げ、元気です」
「何があったか知らないけど、考え込むのはよくないよ。あぁさっき華さんが美味い水饅頭を持って来てくれたんだ。さあ食べて」
「ありがとうございます」
「礼なら華さんに。俺はちょっと首代に用があるから外すけど、誰か村崎殿の相手してくれ!」
状況が飲み込めないまま辺りを見渡すと、丑松殿の声に反応したある女性が階段を降りて来た。
優雅な動きには一歩だって無駄がない。美しい以外はまる言葉はないかも知れない。なんたって彼女は島原一の花魁なのだから。
「あたしがお相手するよ丑松」
「華さん、お願いね」
「任せなさい丑松。さあ瀬川殿、ぼうっとしてないで上がっておくんな。あたしと遊びんしょう」
「え、でも、俺は」
「今日は俺が持つよ村崎殿。じゃあ頼むよ華さん、お願いね」
俺は華宮さんに引かれて華岬の上の座敷へと上っていった。