キミが刀を紅くした
沖田総司
欠伸をしながら仕事をすると言うのは、今のご時勢が平和であると言う証拠になると思うのだ。
勿論これは俺の自論。誰にも支持してもらえない戯言である。
「ただいま帰りました」
不貞浪士を捕らえると言う仕事を終えて、俺は頓所に帰った。近くにいた隊士たちが「お帰りなさい」と声をかけてくれる。
「どうでしたか、沖田さん」
「どうもこうも。不貞浪士なんて言い方するから覚悟して行ったのに、刀の一本も持ってやしない」
「じゃあ」
「余裕で捕らえてきてやりましたよ。先に獄へ送ってから帰ってきたんで、遅くなっただけです」
「そうでしたか」
俺は欠伸を一つしてから頓所に上がった。ついでに伸びをしながら廊下を歩き出すと、後ろからついて来た隊士がくすりと笑う。
「一寝入りもしてきましたか」
「――まあ、そんな所です。あぁそういえば土方さんは? 誰かの警護でしたっけ。まだですか?」
「もう終わってますよ。部屋にいるはずです。そういえば副長も沖田さんを呼んでましたよ」
眠い目を擦って返事をすると、隊士は何処かの部屋へ入って行った。俺は一人で廊下を歩き続けて近藤さんを探した。彼はどうせいつもの部屋にいるのだろうが。
いつもの部屋とは稽古場であるが、やはり近藤さんはそこに座って隊士の稽古を見ていた。
俺はそこへ入り彼の肩を叩く。