キミが刀を紅くした
「御上からのお言葉だ。二人とも成るだけすぐに支度して行ってくれ。後は頼むぞ、トシ、総司」
「はい」
「任せて下さい近藤さん」
紅椿捕縛の為の呼び出し。
多分そんな物はない。二度とない。紅椿の行く末は時代に消されて終わるだけだと思う。だから俺も土方さんも誠を背負いながら、紅椿に居座っていられるのだ。
「じゃあ失礼します」
「あぁ、二人とも気を付けて」
近藤さんに頭を下げて部屋を出ると土方さんはため息を吐く。また紅椿関連か、と今にも呟きそうなため息だったから少し面白かった。何て言ったら怒られるかな。
準備をすると言う土方さんの後に続いて彼の部屋に入る。相変わらず書類だらけで散らかってる。
「土方さん、アレですかね」
「何だ」
「ほら、瀬川の兄さんが消えた事でまた紅椿の露見を恐れたんですかね。て事は俺たち兄さんを殺せとか言われるかも知れないな」
「滅多な事を口にするな」
「土方さんは割りと兄さんの肩を持ちますよね。大和屋の旦那より信頼出来るようになりましたか」
「そう言うお前は大和屋の肩を持つな。あの非道に惚れ込んだか」
「なに、俺が旦那に惚れ込んでるのは今に始まった事じゃない。土方さんだって一度は惚れ込んだんじゃないですか。だから紅椿にいるんでしょ? 違いますか?」
「違う、あいつの思考になんぞ惚れ込んだ覚えはねぇ。それなら瀬川の方がまだ筋が通ってましだ」
「ほら、兄さんの肩持った」
「揚げ足を取るな。早く準備して来い。さっさと行って色々と片付けなきゃならないんだからな」
土方さんは俺を手で払う。俺は仕方なく引き下がって自室に帰った。準備と言っても刀を腰に差すだけである。刀は必要だ。
人を斬る瞬間、刀がなかったら洒落にならないから。だからどんな時でも刀は離したくない。
「総司、行くぞ」
「はーい」