キミが刀を紅くした
「近藤さん、お疲れさまです」
「おお総司。お疲れ」
「例の浪士、捕らえて来ました。一応報告にと思って来たんです」
「ご苦労さん。で、その浪士は」
「もう送りやした。土方さんが捕らえたら獄に送るって言ってたもんですから。直接獄に」
「そうか。早かったな」
近藤さんは汗を拭きながら豪快に笑った。俺は彼の後につきながら稽古場の端の方へ移動する。
彼は俺の頭を撫でた。
「寝癖がついてるぞ。このままトシの部屋へ行ったら怒られるだろう。気をつけていけよ総司」
「あー、すいません」
「……全く。あぁ、総司。お前この後、何か用事があるか?」
「土方さんの所に行って、夕方から市中を見回りして……寝るだけですかねぇ。何かありました?」
「あぁ、紅椿の件でな。トシにも相談していたのだが、罠でも張った方が良いんじゃないかと思ってな。近頃良く暴れれているから」
それを聞いた時の土方さんの反応が是非見たかったものだ。俺はどんな反応をして良いか分からずに、無表情のまま何度か頷いた。
彼はそんな俺には気付かずに隊士の稽古を遠目に見続けている。
「総司、お前もまたトシと相談してみてくれないか。良案があれば教えてくれ。それで紅椿を一網打尽に捕らえようじゃないか」
「そうですね」
それは困るのだけれど。俺も土方さんも紅椿の一員だから捕らえられてしまうかもしれない。
「考えておきますよ」