キミが刀を紅くした

見据える未来


 紅椿の行く末は世に消えるしかないと思っていた。俺はそれを承知の上で慶喜殿に徳川の盾として紅椿を提案し、実際に実行した。

 そうしなければ俺はこの世で生きて行く事が出来ないと思ったからだ。何故なら、村崎がこの世を酷く酷く絶望視していたから。



「総司が消えた」



 朝早くに鍛冶屋を訪れた土方は開口一番にそんな事を言った。俺は当然寝ていた訳だが、土方は俺が寝ている台を蹴り倒した。

 近所迷惑な音が響いて、俺は台ごと転がる。痛みはすぐにやって来たがそれよりも土方の声がうるさくて痛いと言えなかった。



「総司が居なくなったんだ」


「非常識すぎるぞ土方」


「お前より常識はある。そんな事よりも、お前は心配しないのか」


「沖田なら常にふらふらしてたじゃねぇか。何を今さら――」


「お前……お前ここ二、三日何してたんだ。お前が知ってるだろうから来たのに、前から瀬川が消えているのも知らないのか?」


「は?」



 今なんて。



「瀬川は総司より先に消えてる、ここ一週間家には帰ってないし連絡も紅椿の誰とも取ってない」


「紅椿の他は?」


「俺が瀬川の交流関係なんて知るか。そんなもんは吉原に聞け」



 吉原、確かに奴なら村崎の周囲を知ってるだろうけど。あぁだが確かにここ一週間くらいは村崎と連絡を取っていなかった。

 一体、どうして。



「最後に目撃があったのは総司も瀬川も島原の華岬。華宮太夫は客の事だからと口を割らないが」


「吉原には?」


「聞いた。だが知らないと」


「俺が聞いてくる」


「無駄だ。お前には答えねぇだろうよ。あんな依頼が来たんだ」


「あんな依頼?」


「瀬川と共に華宮を殺せ。ご丁寧に慶喜様直々に俺と総司を呼び出して命令が下った。」


< 221 / 331 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop