キミが刀を紅くした
「先に言っておくけど、俺はお前を助けたつもりはないよ大和屋」
「恩を売りたくないんだろ。お前が紅椿に喧嘩を売るのはお前の自由だ。俺は助けられたからってお前に一生ついてく訳じゃないぜ」
「……なら良いよ」
「いつから考えてた。紅椿に喧嘩を売るって意味分かってるか?」
「一週間前ぐらいかな。華宮さんが紅椿に殺されそうになったから止めたいと思ったのが初めだ」
「初め?」
「良く思い返せば紅椿は時を経る毎に横暴になってる。まあお前も殺さなきゃいけないかもなって、最初はそう思ったよ。でもそんな問題じゃないなって思い直した」
「じゃあ俺は殺せるか」
「さあな」
「なんだよそれ」
「そもそもお前に勝てるかは計算に入れてない。真面目に刀を交えた事はないだろ、俺たちは」
「そうだな。野暮な事を聞いた」
「ごめん、大和屋」
「何だよ」
「紅椿、壊すから」
「……方法は?」
「具体的には考えてない。でも慶喜殿には手を出さないつもりだ。紅椿の面々の説得でもしようかなと今は思ってるが」
「大本は断たないのか」
「誰も頷いてくれなかったら、って考えたけど。沖田さんは俺に賛同してくれたから止めたんだ」
「信頼できるのかよ」
「さあね。彼も新撰組を背負う一人だから難しいかも知れないね」
「時代が壊れるぜ」
「楽しそうに言うなよ。それに紅椿はただの駒、時代じゃない」
「駒が一つ抜けたら西洋の遊びは出来ねぇだろ。それと一緒だ」
「そうかな」
「そうだ」
「所でお前、俺を止めるつもりなんじゃないのか? 方法なんて聞いてどうするんだよ」
「俺もやるんだよ、それ」
「は?」
「やろうぜ悪潰し。そんで終わったら船乗って外国暮らしだ」
「はっ、楽観的だな」
「俺は昔からそうだろ。やりたい事と好きな事しかやらないぜ。ほらさっさと行こうぜ相棒」
(01:見据えた未来 終)