キミが刀を紅くした
「俺の裏盾がなければ人数集めが出来んと言うのか? ならばその程度と言う――」
「まず俺でしょう。そんで島原の番人吉原、新撰組の鬼副長土方に斬り込み隊長の沖田、それから花簪の中村。あとそこの服部」
「――新撰組? それに島原に花簪だと」
「貴方の後ろ楯が要る理由が分かったでしょう。主に鬼副長と中村の辺りでね。中村以外は俺も勿論腕が立つ。暗殺なんて朝飯前だ」
「中村椿はなぜ入れるんだ」
「紅一点は花でしょう。まあ口が堅いってのが一番の理由ですけどね。あぁ、あと貴方もか」
「俺が暗殺を?」
「いいえ。貴方は俺たちを駒に指示をくれれば良いんですよ。俺たちじゃ政治には関与出来ないから誰が徳川に仇を成してるか分かりゃしませんし」
「――つまり俺は指示を出すだけか」
「そう。それだけで貴方の回りの邪魔者は消える。事の発端は俺だから責任は俺が取りますし――火の粉が飛んでも貴方ならすぐ消せるでしょう。貴方には害がない」
主は納得した様に笑うと頷いた。
「良い。その組織、俺が預かろう」
「交渉成立って事ですね」
「ただし、俺はその組織に関してはお前としか繋がらん。それから総括はお前に任せよう、なあ、宗柄」
「――そりゃ、有り難き幸せ。あぁそれと俺たちか殺すのは徳川に仇を成す輩だけです。私怨関係は関与しませんからそこの忍にでも頼んでください」
「分かった。仇を成す者だな。だが指示の方法はどうする。宗柄、お前が一々屋敷に来るのは手間だろう。第一俺は江戸にも帰る」
「そうですね、あぁ、ならそこの庭に咲いてる椿を合図に手紙を届けさせて下さい。さっき言った中の誰かに言伝てと共にね。椿ぐらい江戸にもあるでしょう」
「暗殺に使われる花か――見れば血のような色に見えてくるな。あの紅椿は」
「詩人な事で」
「宗柄、お前はもっと臆せ」
「怖いものがあったらそんな組織提案したりしてませんよ。暗殺組織――紅椿ねえ」
大和屋の言葉に主が大笑いした。
「人数が揃い次第すぐに知らせます。その時が公式の反逆の始まりですよ、慶喜殿」
「あぁ。楽しみにしていよう」