キミが刀を紅くした
新撰組に帰った俺は近藤さんに問い詰められた。叱咤されたのではない。三日も連絡なしに独断行動を取ったので心配されたのである。俺は何も答えられなかった。
新撰組の為に頑張ってくれるのは嬉しいが俺が体を壊したら元も子もない。俺あっての新撰組だと言われてしまったのだ。
「邪魔する」
それを聞いた途端、俺は罪悪感にさいなまれた。本能通りに行動してはいけないと言うことが身に染みて分かったのだ。総司の件も世荒しの件もそうだ。俺はちゃんと考えて行動しなければいけない人間だった。
そう感じて意識を改めた時、俺が向かっていたのは大和屋の古ぼけた鍛冶屋だった。
「ーー土方」
大和屋は俺を見て背筋を伸ばす。傍には吉原が、そして奥の寝床には誰かが死んだ様に眠っている。死んではいない。なんとなく、俺は彼が世荒しなんだろうなと思った。
俺は世荒しとは逆の方へ行き、空いている台に総司の様に腰を掛けた。意外と座りが良い。
「吉原もいるのか。丁度良い」
「なに? 俺にも用事?」
「お前も紅椿とやらの一員なんだろ」
「さあ。宗柄が何処まで話してるか知らないから俺は適当に聞いてるよ。二人で話して」
「じゃあ話すか。と言うか、俺が新撰組に行った方がいいのか? 捕まえに来たんだろ」
「いいや。違う」
俺はよくよく考えた。
「条件付きで紅椿に入りたい」
「条件って?」
「新撰組の一部だけ島原に入る事を許可して欲しい。俺と、総司だけでいい。勿論、嗅ぎ回ることはしない。新撰組として入る時はお前に必ず一報すると約束する」
「……だとよ、吉原」
「嫌だって言ったら宗柄は怒るでしょ」
「別に怒らねぇよ。ただ、許可するならお前の言い分一つ聞いてやらねぇ事もねぇな」
「そう言うところがずるいよね。いいよ。二人だけなら。それに紅椿の仲間になるんなら無下にも出来ないだろうしね」
ぶっきらぼうに吉原は言う。
「改めてよろしくね、トシ」
「何だその呼び方は」
「仲間になるんでしょ。仲良くしてくれなきゃ島原に入れてやらないよ」
子供みたいに笑うと吉原は奥で寝ている人の所まで行った。俺はふと大和屋の顔を見る。大和屋は不思議そうに俺を見ていた。