キミが刀を紅くした
結果は半である。俺に恐れを感じていた輩は安堵の息をもらす。そして半を選んでいた者たちに取り分が分けられて行った。
再び親が仕切る。
「入ります、丁か半か」
「一つ質問があるんだけど」
「何だい、旦那」
「今までの結果を教えてくれないか? 五回分だけで良いから」
辺りは俺の言葉に静まった。
「あ、あぁ。さっきのが半だろ、その前が半、半、半、丁、だ」
「そうかい。なら、俺は丁だ」
俺はそう言った。
すると辺りがまたざわめき始めた。人は次々に可笑しな言い訳をつけて丁に賭けている。
丑松が言うから次は丁だ、とかそう言われれば半が多い、次はやはり丁かも知れない、だとか。
「は、半方いないか」
半に賭けているのは一人であった。胆の据わった男だ。辺りに流されない、勝負ではああいう男が勝っていくのだろうな。
「吉原の旦那、掛け金を」
「あぁ」
俺は有り金全てを懐から出して前に差し出した。半に賭けていた男が目を泳がせ、丁に返る。
さっきの言葉は取り消しだ。
「半方が一人も……」
いなくなってしまっては賭けにならない。だが俺はこれを待っていたのだ。一人くらい居てもよかったのだけれど、仕方あるまい。
「じゃあ俺が半に賭けるよ」
「旦那、だが」
「かまわないよ。その代わり、俺が勝ったら金じゃなくてその赤いサイコロが欲しいんだけど」
「しかしこれは」
「掛け金はこれだけある。どっちに転んでも新しいものを買えば良いでしょう。特に思い入れのあるサイコロでもなさそうだしねぇ」
困った様にしていた親は、掛け金の多さを改めて確認して俺の言葉に小さく頷いてくれた。
勿論、これで俺が負けてしまったらただの大損でしかない。