キミが刀を紅くした
―01
七人目の反逆者
七人目の反逆者とはよく言ったもので。俺が紅椿に加担すると決めた翌日から、京の街に徳川幕府から直々の御触書が立った。
街の治安を荒らす紅椿なる暗殺集団を捕らえた者に、一人あたり三百両の賞金を出す……と。
「賞金が掛かるなんて、俺たちも有名になったもんですよね」
「喜ぶな総司。お前は今の立場をわきまえろ。誰だ、お前は」
「新撰組一番隊長、でしたね」
新撰組に呼ばれて、その副長と隊長が並んで出てきたものだから何事かと思ったのだが、何ら大したことはなかった。驚いた。
俺を捕らえた数日と中村殿や丑松殿がついた嘘と罠についての謝罪がしたいとの事だった。
「それにしても瀬川の兄さん、頓所の地下からどうやって逃げたんで? 本当に驚きましたよ」
「見張りも何も居なかったから、出ただけですよ。裏口はがら空きだったし……皆寝ていたから」
「こりゃ、大問題ですよね」
「まあな。瀬川が紅椿に入ってなきゃ此処は潰されてただろうよ」
「大和屋の旦那のお陰って事ですかね。今回のいざこざは」
「そもそもの発端は大和屋だろ」
「あぁ、そうでした」
新撰組に属する彼らが、まさか捕まえなければならない紅椿に加担しているとは思わなかった。
慶喜殿の屋敷を出て、大和屋とは少しだけ話した。と言うかいつもの言い合いをしただけだが。
大和屋宗柄。旧友が紅椿の統治者だったのは少しばかり残念だった。紅椿を倒して強くなろうとしていた俺には、残念だった。
彼は俺では倒せない。
「紅椿は来ましたか?」
「いや……慶喜殿が後に送って下さると仰っていたが、まだ」
「あれは人斬り命令だ。あまり喜べる代物じゃないと思うがな」
「人斬り」
「覚悟を決めておけ、瀬川。お前はもう後悔しても遅い場所に居るんだぞ。後は人を斬るだけだ」
俺は言葉を失った。