もっと、ずっと。
10円を追いかけていると、
男の人の手が目の前ですっと出た。
「大丈夫?気をつけてね」
「あっありがとうございます」
私はそう言うとゆっくりその人の顔を見た。
一瞬、何が起きたか分からない。
幻だと思った。
「純也・・・」
「え?」
「・・・あっ、いや。すっすいません」
「いえ」
びっくりした・・・。
純也がまた戻ってきたのかと思った。
そっくりだった・・・。
「茜~~。10円あった??」
「え?」
「落とした?」
「違うよ、璃紗ちゃん。はい、10円」
「ありがとー。もー、お金は大事なんだから落としちゃだめでしょ?」
「ごめん、ごめん」
「行こう」
明日香と璃紗ちゃんは歩き出した。
私もトコトコと歩き出した。
でもさっきの人が気になって後ろを向いた。
・・・いなかった。