¥時給1000万円



「………永井…!……たまには俺の注文も取れよ~…!」

カウンターにいた客のオーダーを取り終わると、しばらくオーダーを取っていなかった12番テーブルの男に指名された。


永井は急いで男のもとへ向かう…








そう……彼は何かを知っている…





相変わらずの酒の匂いに思わず一歩引いてしまった…。


「……悪かったなぁ酒臭くてよぉ~…!」
「…すいません……」

男は笑った。そして…日本酒が入っていたグラスをテーブルに置いて横目でこちらを見てきた。








「………答えは出たか…?」








男の声だけしか聞こえないぐらい、瞬間的に部屋に響き渡る騒々しい声が無音になった。



この話を振ってくるということは、自分が今日で最後だということを知っているのか…


「……な…何のことですか…?」

奥歯の方から見えた銀歯は何か不気味に感じた。


「………もう忘れちまったのか…?…お前が今まで簡単に死ななかった理由だよ……」


そう…

忘れもしない…あの言葉は…
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