¥時給1000万円
ここ何日かで家族が身近な存在に思えてきた。
食事の際は自分の部屋で食べたり、友達の家でごちそうになることが多かったため、ほとんど家族と顔を合わせなくなっていた。
しかしこの1週間に起きた出来事が影響したのか、なぜか素直な自分がそこにはいた。
嬉しかった…
「…じゃあ…行ってきます!」
5時少し前になり4日間程の準備を入れたボストンバックを持って玄関に立った。
「…行ってらっしゃい!…帰ってきたらまたパーッとなんかしよっか!」
母が笑顔で言ってくれた。
「…うん!」
「…優…がんばれよ!……辛くても泣くんじゃないぞ!!」
父が冗談交じりに言った。
「…俺はそこまでガキじゃねぇよ…」
「…ちゃーんと連絡してよね…!」
「…あっ、そういえば!連絡もできないんだった!!」
妹の言葉で思い出した。
「えっ!?そうなの?」
「…あぁ…とりあえずなんか口外することが禁止らしくて…。それにまだ俺ハタチ未満だし…居酒屋で働いているなんてバレるとちょっと……」
「…そうね…。でもほどほどにしなさいよ。変に余計なことして目をつけられないように…!」
「大丈夫だよ…。」
そう言うと携帯の電源を落として妹に渡した。
「…俺の机の上でも置いといて。」
「はぁーい…」
めんどくさそうに携帯に付いているストラップを指でぐるぐると回しながら言った。