¥時給1000万円




全体の中心にある四人掛けのテーブルに座る男性が一番に手を挙げた。帽子を深く被り、髭を異常に生やし、いかにもホームレスのような服を着ている…。不気味だ……

「……フフ…じゃあ…………………その新人の君に注文を受けてもらうかな………!!」
「……えっ!?…お…俺っすか…!?」
永井は突然指名されて戸惑った。
「…えっ…いや……その…」
「……さあ早く来いよ…!!」
薄汚れたシワシワの手で手招きをしている。

しかし足が棒になってなかなか一歩が出なかった…。

「…ほ…ほら…!…早く行けよ…!…嫌われちまうぞ…!」
大島が後ろからポンッと押してくれたおかげでやっと足が動き出せた。

手にギュッと伝票とペンを強く握りしめて、ゆっくりではあるが一歩一歩着実に男性の元へ向かった…。



「……失礼します…。ご注文は…?」
「…まぁとりあえずは……この…いつもの『焼酎』をもらおうかね…」
男は汚れた歯を出しながら、メニューの『焼酎』という部分を永井に見せた。

すかさず伝票に書き込んだ。丁寧に書いたものの字は比較的小さかった。

永井が注文をとっている間にも他の客が従業員を呼んでオーダーをとっていた。
「…以上でよろしいですか…?」
「……あぁ…また一時間後に注文させてもらうよ…!」
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