¥時給1000万円
何か意味深な口調だった…。
「…は……はい…」
『焼酎』とだけ書かれた伝票を持って厨房へ渡す。

もう生臭いにおいはあまり感じなくなっていた。

すると奥からかなり汚れた制服を着た白髪混じりの男性がやってきて伝票を確認した。
「………兄ちゃん…!これカウンターの注文だぜ…!…ハッハッハッ…!!」
「…あっ…」
返された伝票を持ち、近くの客の注文を受けている二葉を待った。

厨房へは縦横50センチ四方の間からしか覗けなかった。そこから伝票を渡したり、料理が出たりする。
だがカウンターで作れるお酒はどうやら違うみたいだ。


「…あっ…あの…」
伝票に注文を書きながら帰ってくる二葉に近づいた。
「…カウンターの伝票は自分たちで作らなくちゃいけないんだ…。」
「…え?」

話が分かっていた二葉は伝票を書き終えると顔をあげて永井の伝票を受け取った。
「…まだ分からないと思うからまずは僕がやっておくよ。とりあえずカウンターの伝票はここに挟んでおいてくれ。」
カウンターの裏側へ入るとキッチンの洗い場の近くにマグネットで挟めるところがあった。
その隣には上に向いた一本の太い針の置き物があった。終わった伝票をここに刺していくのだろう…。
< 72 / 392 >

この作品をシェア

pagetop