¥時給1000万円
「…はい…。」
「…それと…上の伝票は自分たちの。厨房には二枚も渡さないように。あとちゃんと人数とテーブル番号を確認して書くこと。」
「……あっ…はい…すいません…。」

何が起こるか分からない雰囲気の中、すぐに気転をきかせることは難しかった…。

「…おい!永井ー!…俺にも注文させてくれー!」
部屋の奥の方でもうすでに酔っぱらった客がいた。
近くでは大島が慣れた手つきで注文を伝票にサッサッと書いていた。
大島は突然学校を休んだ日から働いているのだろうか…。


永井を呼んだ客は顔を真っ赤にして、注文をしながらお酒のにおいを吐き出していた。
目の奥には よどんだ目が見えた。
言われた注文を伝票に書きこんでいると…
「……兄ちゃん…」
「…はい…?」
「……今日は こん中でまず誰が…これになると思う…?」
男は親指を立てて首元を指し、『クビ』を示す動作をした。
「…それは…多分…俺じゃないかと…」
男は突然動きを止め、黙った。

「………………ガハハハハハッ!!…大丈夫だ!よほどのことがこの店に無ければ大丈夫だ!」
「…よほどのこと…?」
「……あぁ!よほどのことがな…!!」

この客は何かを知っている…!
「…あ…あの…そのよほどのことって……」
< 73 / 392 >

この作品をシェア

pagetop