涙の雨

「…ううん、ありがとう」

俺はそのまま紙幣をもらった



父親とは昔からあまり話した記憶が無い


まぁ家にいなかったから、仕方ないのかもしれないけど



話すと言えば、勉強の事とか学校の事ぐらい



元々寡黙な父親だから

口数も多くなかったんだ



「遼太、明けましておめでとう」

その時、後ろから母親に声をかけられた


「おせち出来てるけど食べる?あなたもどう?」

「―いや、俺はいい。俺は少し寝るよ」


父親は母親を避けるようにソファーから立ち上がり


一人リビングから出ていった



「まったく…」

母親が小さなため息を出す



俺はその姿を横目で見ながら

ダイニングテーブルに座った




両親はいつもこんな感じなんだろうか


少なくとも

母親は歩み寄ろうとしているのに



父親は逃げるように母親を避けている



もちろん、今から始まった事じゃないんだけど…



「遼太、お雑煮はどうする?」

何事もなかったかのように、俺に聞いてきた母親




「じゃお雑煮も」


こういう事に、子供は口出ししない方がいいのかなと思い


俺はそのままご飯を食べた
< 104 / 195 >

この作品をシェア

pagetop