涙の雨
「…ううん、ありがとう」
俺はそのまま紙幣をもらった
父親とは昔からあまり話した記憶が無い
まぁ家にいなかったから、仕方ないのかもしれないけど
話すと言えば、勉強の事とか学校の事ぐらい
元々寡黙な父親だから
口数も多くなかったんだ
「遼太、明けましておめでとう」
その時、後ろから母親に声をかけられた
「おせち出来てるけど食べる?あなたもどう?」
「―いや、俺はいい。俺は少し寝るよ」
父親は母親を避けるようにソファーから立ち上がり
一人リビングから出ていった
「まったく…」
母親が小さなため息を出す
俺はその姿を横目で見ながら
ダイニングテーブルに座った
両親はいつもこんな感じなんだろうか
少なくとも
母親は歩み寄ろうとしているのに
父親は逃げるように母親を避けている
もちろん、今から始まった事じゃないんだけど…
「遼太、お雑煮はどうする?」
何事もなかったかのように、俺に聞いてきた母親
「じゃお雑煮も」
こういう事に、子供は口出ししない方がいいのかなと思い
俺はそのままご飯を食べた