涙の雨

幼稚過ぎても駄目だし

かと言って大人びても逆に疲れてしまう



自然体が一番だとわかっていたのに


そう頭で思えば思うほど

望月への態度が
少しずつぎこちなくなってしまう




あっちはあまり気にならなかったみたいだけど




「さぁ~てと、これからどうすっかな?遼太は行きたい所あるか?」



いつの間にか

四つ残っていたたこ焼を、全て食べていた山田は


俺を見つめながら言った




「俺、あんまり浅草知らないです。あ!でも花やしきなら知ってますよ!」

「―花やしき?懐かしいな~、ガキん時行った以来だぜ。こっから近いから行ってみるか!?」



そう言うと、勢いよく立ち上がり

たこ焼のパックをそのままゴミ箱に捨てた



「今日、やってるんですかね?」

「んな事行って見ねぇとわかんねーよ。ホラ!行くぞ!!」



山田がベンチに座る俺を見下ろしながら、前に差し出したのは


大きな手だった



「迷子になったら困るからな」


意地悪そうに笑うその姿を見た俺は

温くなったジュースをイッキ飲みして、ゴミ箱に捨てる




そして山田の手を取ると


俺達はあの人混みの中へ消えていった
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