涙の雨
一月、二月が過ぎても俺の生活は変わらないままで
三月になると冷たかった空気が、少しずつ暖かくなって
天気予報では桜の開花予想日が当たり前のように
取り上げられていた
そんなある日―…
「―っ!」
指先にチクッと痛みを感じた
「大丈夫か?賢二」
隣にいた賢二が
俺の指先を覗き込みながら言った
四月に入ってくる新入生に配る、手書きの冊子を作る係になった俺は
数人の友達と、放課後居残りをしながら作っていた
「結構深いトコまで切っちゃったな、保健室行って来いよ」
カッターで指の腹を深く切ってしまったのか
真っ赤な血が溢れて出ていた
「まだ先生いると思うぜ?ほら、早く」
賢二に言われ、仕方なく席から立ち上がる俺
その間も、血はどんどん出てきて
指に滴り落ちるほどだった
―しょうがない…か
こんな状態で作業も出来ないし
いても邪魔なだけだと思った俺は
渋々、保健室に行くことにした