涙の雨
「何で切ったの?カッター?」
「はい…」
上目使いで望月を見ると
あてていたティッシュを取り
傷口をじっくりと眺めている
「随分深い所までいってるね、消毒しようか」
望月は、俺をあの丸椅子に座らせると
手慣れた様子でピンセットを取り出し、棚の中からビンを出した
「しみるよ」
ピンでビンの中から、小さな綿を一つ取り出し
俺の傷口につける
「―っ!」
液が傷口がしみて、体が一瞬びくついた
何度も綿を傷口につけてると
泡状のものがたくさん出てきて、望月はガーゼでそれを拭き取った
「…浅草寺行ったんだって?」
「―え?」
「博文から聞いたよ。お参りに行った後、花やしきでめいいっぱい遊んだって」
望月は手当てをしながら
俺に言った
―先輩…話してたんだ
俺の知らない所で、まだ望月と連絡を取っていたんだと思ったら
少し複雑な気分になった
俺なんか、したくてもずっと出来ずにいるのに…―