涙の雨
「楽しかった?」
「あ…、はい」
俺が少し不機嫌そうに言うと
「―それはよかった」
望月は笑いながら言っていた
―何で、笑ってるんだよ…
もっと嫉妬したりとか
嫌な顔とかして欲しいのに
望月はそんな素振りも見せなかった
「はい、出来たよ」
左手の中指には包帯が巻かれていて
絆創膏だと血が溢れ出すからねと、望月は一言付け加える
「ありがとうございました…」
俺はその態度を見て
少し意地悪してやろうと思った
「―望月先生」
別れた後でも
名前で呼んでくれて嬉しかったのに
やっぱり俺の事は、もう何とも想ってないんだなと感じたら
少しムカついたんだ
望月の顔を見て言わなかったから
どんな表情をしていたかわからないけど
絶対、イラッときたと思う
だって嫌味っぽく言ったつもりだし
俺の声のトーンで
怒ってるんだなって直ぐにわかる
唯一の人だったから