涙の雨

「じゃ俺、行きます」


椅子から立ち上がり、望月の横を通り過ぎようとした瞬間



望月が俺の腕を強く掴んで

足を無理矢理止めてきた






「離して…!」

「何、怒ってるの?遼太」


望月の声もトーンが変わる




―やっぱり怒ってるんだ





「別に怒ってないですから。手、離してください」


「―そういう言い方が、既に怒ってるって言ってるんだよ」


腕を掴む力は痛いほど強いのに

望月の表情は平然としている



「望月先生って言ったのは、嫌味?それとも本心?」



その言葉に


俺はつい黙り込んでしまった





本当は、別れた後でも尚輝さんと呼びたいけど


今はそんな関係じゃないし



自分の中で、どこかで区切りみたいな物を作らないと



ずっと望月を引きずってしまいそうで


正直怖かったんだ





教師と生徒なんだって

無理矢理でもいいから思わないと






残りの学校生活が辛くなりそうで嫌だった
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