涙の雨
『―あのさ、今から会えないかな?』
望月の一言に
一瞬、瞬きが止まった
『話したい事あるんだ』
―話したい事…。一体、何だろう
その時
山田の顔が頭にちらついて
もしかして…と嫌な予感がした
『予定があるならいいんだけど…』
「あ、大丈夫です。今から保健室に行きます」
賢二の事など、すっかり忘れていた俺は
そのまま電話を切った
―先輩、俺と付き合ってる事
尚輝さんに言ったのかな…
望月に隠すつもりは無かったけど
出来れば話して欲しくなかった
しかも相手が相手だし…
「遼太~、早く行こうぜ~」
その時、賢二が俺の鞄を持ったまま
笑いながら近寄ってきた
「ごめん賢二!用事が入っちゃったんだ」
「―えっ!マジかよ!?」
俺の言葉に驚いた様子の賢二
「飯は明日行こう!な!?」
「…ったく、しょうがないな~」
ため息混じりで賢二が俺の鞄を差し出すと
悪いなと一言付け加えて
自分の鞄を受け取った
そしてそのまま賢二を横切り
急いで保健室に向かっていった