涙の雨
“不在中”
保健室の扉にかかる
一枚の札
俺を待ってくれている証拠だ
―ドキドキするな…
それは
山田とは違う
また別の気持ちだった
―扉の向こうに尚輝さんがいる
今度こそは…
今度こそは
本当の気持ちを伝えなくちゃ
俺は小さく一息ついて
引き戸をゆっくり開けた
「…随分早いね」
室内にいた望月は白衣姿ではなく
すでに私服の格好へ着替えていた
「もしかして走ってきた?」
優しく笑う望月
図星の俺は、あっという間に顔が赤くなる
「もう帰るんですか?」
「うん、仕事は全て片付いたしね」
デスクの上にあった自分の鞄を手に取ると
俺の方へゆっくりと近づいてきた
―ドキンドキンドキン!
望月が目の前に立っただけで
心臓が飛び出てきそうなほど激しく動く
―あぁ…ヤバい…
俺は一人動揺しながら望月の顔を見上げた
「さぁ行こうか」
「―は?」
「車で一緒に帰るんだ。話はその後のお楽しみ」
全く状況が掴めていない俺は
ニッコリと笑う望月を、見つめる事しか出来なかった